インド奮闘記(実感編)

頭の中で描く世界地図。日本があって、そのずっと西側にあるインド。
地図ではたったの数十センチで、地図をどんなにじっくり覗いて見ても、その中にある人々の顔やそこで暮らす人々の息づかいは見えなかったし、聞こえてこなかった。けれど、自分は今こうしてインドに立っているんだ。長いフライト時間を機内で過ごした飛行機から地面に降り立つと、そんなことが頭に浮かんできて、そのまだ薄っすらとした実感さえたまらなく嬉しかった。

到着した飛行機から降ろされ、人々の流れに乗りながら歩く間も、終始周りをキョロキョロしながら歩く。税関の列にはドキドキしながら並んで、自分の順番が来るのを待った。
手にはしっかりとパスポートを握り、口の中では、税関員の質問に返そうと思う言葉をぶつぶつと繰り返しながら、それでも眼だけはキョロキョロと必死にまわりの状況をうかがうことをやめない。

空港内はお世辞にも綺麗と言えず、なんだかすこし古ぼけていて、その感じが昔ながらのビルを思わせる。敷き詰められているタイルの所々が少し剥がれ、大理石の冷たい壁は無機質に感じられて、そこに立っていると少し緊張を強いられた。けれど、壁に貼られている赤や黄色のビビットな色のポスターや看板とそこに書かれてあるヒンディー語の文字、サリーを羽織るエキゾチックな顔立ちをした女性の写真を見ていると、なぜか嬉しい気持ちになれた。

預けた荷物がコンベアーに流れはじめ、荷物を受け取ろうと待つ間もキョロキョロと周りの様子を絶え間なく探る。前と変わらず、そこには相変わらず今まで自分が見慣れてきた様な顔や言葉はなく、自分よりも肌の色が浅黒く、目鼻立ちのはっきりした人ばかりの世界がある。 荷物を受け取り、歩き出すも緊張はずっと続く……足を止めたら何かが起こってしまうんじゃないかと怖くなり、一時も歩みを緩める事なく出口に向かって進んだ。

ぼやける月、砂塵舞い霞む空、耳に届く喧騒、異国の言葉、多く掛けられる声、好奇の目、合う視線、鳴りやまない車のクラクショ ン、でこぼこした砂利道、徘徊する痩せた犬達、ゆったりと道に座る牛、お香の薫る空気、むせかえる様な匂い……人、人、人、人…これらのものが一気に自分の中に飛び込んでくる。

圧倒的な勢いのある濃い命が生き溢れている国。

そこに立つ自分…。

外に出ると飛び込んで来たもの…そこがインドでした。

015_2016

さあ、出発だ!

今回のインドは計画なしの旅、すべてがその場で決まる旅。
けれど、さすがに「地球の歩き方」(*インドには危険なので出来るだけ夜の到着は避けましょう。夜に着く場合は歩き回るのは危険です。宿泊先を予約しておきましょう。)に習って、初日の宿だけは日本で予約してきた。でも、本当に空港まで迎えが来ているかすごく不安だった。というのも、何を思ったか予約したのがネット上で見つけたインド在住の旅行代理店?!の方とメッセージのやり取り を2,3回しただけで決まった宿だったからだ……。

空港の出口では、旅行者を乗せるため今か今かと待ち伏せるリキシャの運転手で溢れ、同じように旅行者の名前と会社名を書いた紙をヒラヒラと見せる旅行会社の人々でごったがえしている。 その光景を前に、今から自分もその中に歩んで行かなければならない。(例えるなら、レッドカーペットを中央に敷いて、左右にサインをねだるたくさんの熱狂的ファンの間を歩いていくイメージ)一歩進むごとにインドの人々から向けられるたくさんの好奇の目に恐怖慄きつつも、ゆっくりと歩きながら1枚1枚、紙に書かれる文字に目を凝らす。

ない…

ない……

ちがう

…ない

「ロニシゲタトラベル こたにけんじ」

んっ?

あったぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!!!!
(ホントにカタカナとひらがなで書いてあった)

こちらが紙に反応したのを見ると一人のオジサンが近づいてくる。
白いターバンを頭に巻き、髭を多くたくわえ、少しお腹のでた、いかにもインド人といった風貌のオジサン。

「Nice to meet you. I am Rajah. Are you Mr. Kenji ?」
『Yes, it is so. nice to meet you too.』

ラジャさんと名乗るそのおじさんは簡単な挨拶を交わすと大きな手で握手を求めてきてくれた。温かい大きな手で握手をすると、なんだか少し緊張がほぐれた気がして、その後の宿泊先のホテルまで走る車内では、アジトさんが話す流暢な英語と、僕の話す片言の英語で本当に簡単な会話が交わされた。そして、車の中から見える今まで見たことのない景色に、また少しずつインドに来たことを実感していった。

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車内から見えるインドの光景、薄暗いオレンジ色の街灯が照らす道には野良犬や牛が道の真ん中をゆったりと歩き、道路の脇にある屋台では焚き火をしながら小さな子供から大人までが威勢良く騒いでいるのが見える。外からは四六時中、車のクラクションが聞こえてくる。車は我先にと広い道いっぱいに広がりながらも他の車の間をクラクションを鳴らしながら縫うように上手に走って行く。
その活気あふれる街の様子に、なんだか怖いようなワクワクするような不思議な気持ちが湧いて出た。

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大きな通りを抜けて、脇道に入ると明かりは一気に暗くなり、地面も砂利道になる。砂ぼこりの立ち込める道を激しく揺られながらしばらく走ると車を降ろされ、さらに案内されるままに人の少ない寂しい感じの路地を歩いていくと宿泊先となるゲストハウス
に到着した。『YES SIR GUEST HOUSE』…入口を開け放したままの小さな建物で、入ると小さな受付とソファーがあるのみ。中では2人の従業員が笑いながら話をしていた。
受付で簡単な宿泊手続きをすると従業員の男の人からすぐに1枚の紙を渡された。

「こんにちは、わたしはロニです。あしたのあさ会いましょう。よるは外を歩かないでください」

崩れた日本語で走り書きされた文字には、日本でメッセージのやり取りをしたロニさんの名前が書かれてあった。ちゃんとメールが届いていたことと見慣れた日本語に思わず喜びつつも、夜中に外を歩き回れないほどの危険な状況を知り、軽くビビっていると次は部屋に案内される。でっかい錠前の鍵を渡されて、狭い階段を2つ上がって通された部屋は思いのほか広くて、その中にはベッドが1つあるだけ。綺麗とはいいがたい部屋だけど、疲れていてすぐに休みたいと思ったので、「郷にいっては郷にしたがえ」の考えのもと、荷物を下ろし寛ぐことにした。

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とりあえず身体を休めようと靴と靴下を脱いで、裸足のままベッドで横になって天井を見つめて休んでいるとすぐにドアをノックされた。

コンコンッ

「おなか減ってないか?」by宿のインド人より

声を掛けられ、そう聞かれると、なんとなくおなかが減っている気がしたので何か頼むことにした。けれど、メニューを見るもなんだかよく分からないので適当な食べ物を選ぶ。きたのはでっかいお皿に野菜と麺が入った焼きそば風の食べ物(60Rs=約180円)。
ボリュームたっぷりで少しモサモサした所を除けば、カレースパイスの効いた焼きそばといった感じでとても美味しかった!

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するとまた…

コンコンッ

「ミネラルウォーターいるか?」by宿のインド人より

じゃあ、くれ!ってことで持ってきてもらったミネラルウォーター、とりあえず念のため蓋が開いていないことを確認して飲んでみた。
美味しい!お腹も問題なし!!(30Rs=約90円)

再びベッドで横になり天井にあるコンセントの外れたファンを見つめながら今日の長かったフライトや明日から始まるインドの旅を思う。いま自分は、インドの名もないゲストハウスで一人ベッドに横になっている。そんなことを考えると思わず嬉しさのあまり、枕に顔をうずめたり、ベッドをゴロゴロとはしゃぎまわったりした。外からはまだ車のクラクションや人々の騒がしい声が時折聞こえてくる。本当にインドに来たんだ♪いつの間にか笑っていた。その日は機内でさんざん寝たはずなのに、お腹も満足して気も緩んだのか気がつけばまたぐっすりと寝てしまっていた。
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